はじめに
みなさん初めまして!北と申します.
主編集者の元同僚で,現在は都内の大学院に通っている修士課程1年生です.
さて,みなさんは香港についてどれくらいご存じでしょうか?最近だと大規模デモで世間を賑わせたという印象が強いでしょうか.
かつてはイギリスの植民地で,現在は世界的な金融都市としても有名な香港ですが,実は市民の間で貧富の差が拡大して大きな社会問題となっています.そのうち,今回は住宅にスポットライトを当てて簡単にみていきたいと思います.
なお,この記事は以下のyoutubeで発見した動画を参考に執筆しています.全編英語で,日本語字幕もないのですが興味のある方はぜひご覧ください.
Vox: Inside Hong Kong’s cage homes (香港の狭小住宅の内部)
香港の大衆住宅の実情
狭すぎる間取り
香港の不動産は価格が世界一高いことで有名です.住宅の平均的な値段は,市民の平均年収の約20倍に相当します(bloomberg).日本に換算すると,平均年収がだいたい400万程度なので8000万円は出さないとまともな家は買えないということですね.
当然それに対応して賃貸住宅の価格も高騰しているため,所得の低い人たちはCage house(鳥かご部屋), Coffin house(棺桶部屋)などと揶揄される狭小住宅に押し込められています.マンガ喫茶難民のようですね・・・
このような住宅は見ての通り非常に狭く,平均して7平米~13平米ほどで,なんと駐車場以下の面積に相当します.
どうして不動産が高いの?
苛烈な香港市民の住宅事情を見ていただきましたが,ではどうして香港ではこんなにも住宅の値段が高いのでしょうか?
根本的な原因は 政治上の仕組み
大前提として,香港内の土地はすべて政府によって所有されています.新規に土地を開発する際には,複数のデベロッパーを募ってオークションを行い50年のリース契約を結びます.しかし,税制や集約性が優れていてビジネスが行いやすい香港は入札競争も激しく,結果として驚くほどの高値がついてしまいます.中国本土や欧米のリーディングカンパニーは資本が桁違いなので,それでも売れてしまうのです.
香港政府は不動産収入に運営を大きく依存しています.政府からすると,オークションで高値がついたほうが儲かるので自由競争をやめるインセンティブがありません.高く取引された土地をたとえば住居用に貸し出すとなると相応の賃料をとる必要があり,それはお金持ちや外資系の駐在員たちにとっては十分払える金額なのでビジネスとしてペイするのです.
コテコテ資本主義の行き着く先
ネイティブ市民たちは高すぎる賃料を払えずに前述の狭小住宅に暮らします.香港政府が土地に関する制度を改正し,土地の値段を庶民向けに下げようという動きもようやく起こってきたようです.しかし税収を不動産に頼っている政府は,お金だけ見るとそうする理由はなく,いわば一般庶民がお荷物になっています.地域が豊かになるための戦略としてビジネスを誘致した結果,ネイティブ市民が虐げられているというのはなんとも皮肉ですね・・・
長いわ一言で!という人のためにまとめ; TLDR
- 政府は外資企業に土地を貸して儲けているが,そのせいで地価が高騰し,一般市民はまともな家に住めない.
おわりに
反体制デモのニュースを聞いていると,政府に対する不信感が根強いんだなあという印象を受けましたが,背景にはこのように市民ファーストでない政府の姿勢があるのかもしれないなと,ちょっと思いました.
こんな感じで海外の小話みたいなのをちょこちょこ書けたらなと思ってます!それではまた!
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